「起業」や「スタートアップ」という言葉には、どこかキラキラとした響きがあります。
かく言う筆者もその「起業」という言葉だけに憧れたひとりです。
自分のアイデアやサービスで人の悩みを解決し、社会を変えていく──そんなイメージを持つ人も多いでしょう。
さらにメディアに登場するのは、代表的な例を挙げれば、最年少で上場を果たした株式会社Yutoriの代表である、片石社長など、カリスマ的存在ばかり。
彼らはストーリー性があり、社会に受け入れられやすい大義を掲げているため、どうしても「起業=華やか」という印象が強調されます。
SNSが当たり前となった今の時代では、企業家たちが昔に比べて近い存在のように思えるのも無理はないのかもしれません。
しかし、それは表舞台の一部。多くの起業家にとって、現実はもっと地味で、泥臭い活動の連続です。
起業(会社経営)の実態:なぜ泥臭い活動が必要なのか?
起業する=会社経営をするということになるワケですが、この会社経営というのはかっこいいものではなく、実は泥臭くさい活動の積み重ねにあるのではないかと筆者は考えます。
そう思うのには極めてシンプルな理由があります。
それは、当たり前ですが 、多くの人が「無名で、信頼もゼロの状態から始まるから」 です。
大手企業なら、商品を出せば「〇〇社の商品だから安心」と買ってもらえる。(実はそんな甘い世界でもなかったりするのですが。)
有名な経営者なら、出すだけで話題になる。(これも一概には言えないのですが。)
という大きな利点=知名度(認知度)があるのです。
でも、私たちのような無名の起業家はそうはいきません。
- 誰も会社の名前を知らない
- 誰も商品を知らない
- そもそも信用がない
この「ゼロ」の状態から脱するには、コツコツと地道な活動を積み重ねるしかありません。
例えば:
- 営業電話を1日何十件もかける
- メールを何百通送って数件しか返事がない
- SNSを毎日投稿するが、最初は誰も見ていない
- 展示会でひたすら名刺を配る
こうした活動は華やかさとは無縁です。
ですが、この地道な積み上げをしなければ「認知」も「信頼」も得られない。
つまり、 泥臭い活動は起業家に課せられた宿命 とも言うべきかもしれません。
弊社における泥臭い活動例について
弊社はEC事業を展開しており、いわゆる、ネット(WEB)でモノ(自社の商品)を売ることを行なっているのですが、実際にここまで弊社の商品をお客様に手に取ってもらうために、どのような泥臭い活動をしていたかをご紹介します。
私たちが最初に取り組んだのは「ギフティング」でした。
YouTuberやインスタグラマーに自社の商品を無償で送り、紹介してもらうという活動です。
いわゆるインフルエンサーが企業案件と言っているような「アレ」です。
当初は、マーケティングこそ必要だが、最終的には「商品が良ければ売れる」と思っていました。
しかし、現実はまったくの逆。良い商品でも、誰も知らなければ存在しないのと同じです。
そこで私たちは、数え切れないほどのDMを送り、返事がなくても送り続けました。
やっと反応をもらっても「今回は見送ります」と断られることも多く、成果が出るまでには時間がかかりました。
特に初期の時点では会社の名前も商品の知名度もなく、怪しいのでは?と思われがちでなかなか興味を持ってもらえないこともしばしば。
それでも続けていくと、少しずつ紹介してもらえる機会が増え、「あの商品見たことある」という声が出てくるように。
最初は徒労に思える活動も、積み重ねることで確実に効果が表れたのです。
今ではインスタグラムでよく見るとお声を頂くようになるほどまでに来ることができました。
この経験から学んだのは、 「良い商品だから売れる」のではなく、まずは知ってもらわないと始まらない ということでした。
商品力、サービス内容ももちろん大事
良い商品よりも「まずは知ってもらう」という認知活動が大事と言うことを述べましたが、認知が取れれば良いかと言うとそれも誤りです。
有名だけど、商品が良くなければ、口コミやレビューで低評価が入り、結局お客様には選ばれません。
最近ではEC事に限って言えば、本当に、模倣品ばかり出回っており、汚い言葉で言えば、パクリ合いとなっています。
なかなか差別化が難しくなってきてるのは事実ですが、それでもほぼ同じ中身でパッケージだけ変えた商品や、自社のマーケティグ力だけで勝負すのではなく、その会社の「こだわり」であったり、「想い」の部分を商品に反映させ、自分たちが自信を持って「これなら売れる」という商品にすることが大事だと、これまでの経験を通して思います。
起業は「自己流」ではなく「模倣」をお勧めする
もうひとつ大きな学びがあります。
それは「起業は自己流でやるべきではない」ということです。
先ほど商品はただ模倣するのではダメだと言う内容を述べましたが、商品開発においては参考にすることは全然アリだと考えますし、こと会社経営においては少し違うのかなと思います。
なんでもそうかもしれませんが、会社経営にも型があると筆者は考えます。
弊社は当初、「パーソナライズ×EC」という独自の事業構想を掲げていました。
一見すると新しく聞こえますが、実態は無謀でした。
- 商品ごとに在庫パターンを抱える必要がある
- AIやビッグデータ活用が必須だが、私たちには経験がない
- EC事業も未経験
つまり、土台となる知識やリソースがゼロの状態で「掛け算」をしようとしていたのです。
結果、現実的ではなく、構想は頓挫しました。
この経験から痛感したのは、 まずは既にうまくいっている企業を真似ること の重要性です。
ゼロから完全オリジナルを作るのは難易度が高すぎます。
模倣から始め、徐々に改善や独自性を加えていくのが、現実的で再現性のあるアプローチだと学びました。
これから起業を目指す人へ
これから起業を考えている人に伝えたいことがあります。
- 起業は華やかに見えるが、裏側は泥臭い活動の積み重ねであることを覚悟すること
認知ゼロ、信頼ゼロから始まる以上、これらは避けようがありません。 - 「アイディア勝負」ではなく「模倣と改善」から始めること
先に述べた通り、独自性だけで挑むのはリスクが高く失敗の可能性が高いです。 - 商品の良し悪しは、まず認知された後に問われること
知られない限り、どんなに良い商品も存在しないのと同じです。まずは認知をとることからがスタートです。
まとめ
「起業」という言葉は、どうしても華やかに見えます。
しかし実態は、営業、ギフティング、DM送信、展示会参加といった泥臭い活動の連続。
この現実を知らないまま起業すると「思っていたのと違った」と挫折してしまうかもしれません。
一方で、泥臭さを覚悟して取り組めば、少しずつ認知が広がり、信頼が積み上がり、商品が本当に評価されるフェーズに入ることができます。
起業を志す方には、ぜひ「華やかさの裏にある現実」を理解したうえで挑戦してほしいと思います。
その上で、まずは模倣から始め、泥臭くコツコツと積み重ねていくことこそが、成功への一番の近道です。
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